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《Facebook掲載中》リーフレットQ&A⑥

2022年3月22日

Q6:社内に同性パートナーをもつ従業員はいないと思われるのに、福利厚生の対象者を広げることに意味はある?

A6:社内の規則や制度は、将来を見据えて会社の仕組みを整え、会社の方針を知らしめるために作るものです。

トラブル等に対応する形で制度を作るのではなくあらかじめ備えておくことで、実際に制度の対象者が出たときにトラブルになるのを防ぐことができます。

また、新しい制度を導入した時に利用者がすぐには出なくても、制度そのものが会社から制度対象者への支援のメッセージとなります。


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ここ数年で、同性パートナーのいる従業員に異性パートナーがいる場合と同様の手当や休暇・休業を与えたり、性同一性障害治療の入通院に他の傷病と同様の休暇を与えたりする企業もでてきました。


その意義を評価するにあたって考えなければならないのが、「本人の申し出がなければLGBTsは見えない」、というSOGIに関わる問題の難しさです。


レズビアンやゲイ等の性的指向についてのマイノリティも、性自認の面でマイノリティであるトランスジェンダー等も、他人から見てわかるものではありません。

メディアに出るセクシュアル・マイノリティも増え、「女性的なゲイ」や「男性的なレズビアン」が大多数ではないことはだいぶ知られてきたと思います。実際のLGBTsは、見た目もしぐさや話し方も様々です。


また、例えば異性装をしているように見える人がいたとして、

・戸籍等の性別と性自認が異なる人なのか

・異性装を好むいわゆるクロスドレッサーなのか

・お洒落としてジェンダーの規範を超えた服装を楽しむ人なのか

・そのどれでもないのか


本人以外が判断することはできません。


つまり、会社がセクシュアリティに関わらず多様な従業員に活躍して欲しいと考え、困っていることがあれば支援したいという方針を持っていたとしても、セクシュアリティをオープンにしていない人に対して「セクシュアル・マイノリティとしてこの会社に不満はありませんか?」等と個別にアプローチすることはできないのです。


そのため、SOGIの問題に関しては会社は基本的には「待つ」ことになりますが、ただ待つのではなく「準備を整えて、待つ」ことが大切です。

何か問題が起こった時に準備がなかった場合、対症療法的に規則や制度を作ったり変えたりしがちです。それでは対応が行き当たりばったりになってしまい、次に似たようなことが起こったときに公平に対処することができません。困りごとやトラブルに対処できるようあらかじめ規則やガイドラインを定めておくのは、分野や問題のありかを問わず、安定した労務管理のために必要なことです。


福利厚生は会社の裁量が大きい分野とはいえ、差別的な福利厚生制度までもが許されるわけではありませんので、例えば、「戸籍等の上で『異性』のパートナーを持つ場合には事実婚でも家族として扱うが、『同性』のパートナーは書類を整えていても家族と扱わない」、という規定がある場合、同性のパートナーを持つ従業員が、これを不公平で差別的だと訴えてくる可能性は十分にあります。


しかしこれは、従業員のパートナーに対する会社の考え方を、あらかじめ公平な形で定めておけば、防ぐことができるトラブルです。

また、新しい制度を導入した時に利用者がすぐには出なくても、制度そのものが会社からのメッセージとして機能する場合があります。


福利厚生の対象者を広げる制度を作ることで、社内にいる「見えない」セクシュアル・マイノリティに会社の支援の意志を伝えることができます。さらに、制度を対外的に公表すれば、取引先や求職中のセクシュアル・マイノリティに働きやすい会社だとアピールすることもできます。


つまり、社内の規則や制度は、将来を見据えて会社の仕組みを整え、会社の方針を社内に(時には社外にも)知らしめるために作るものと考えるべきです。


ある面でマイノリティである従業員がいなくてもそのマイノリティ性に配慮した制度を整えるのは、妊娠・出産・育児や介護を行う従業員がいなくても育児介護休業規程を整えるのと同じことです。

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☆社会保険労務士は、法律や公の制度について助言するだけでなく、社内規則、社会情勢、社内の風土等、様々なレベル、様々な要素から判断して、よりよい職場をつくるためのアドバイスをします。

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